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元捕虜の訪日記録

カトリック奈良教会訪問−2011年3月7日

福林 徹

3月7日(月)朝、元オーストラリア兵捕虜・家族の一行14人と、通訳ガイドの工藤さん、外務省大洋州課の金田智宏さん、POW研究会の田村佳子さん、佐久間美羊さん、デヴィッド・モートンさん、福林徹は、バスで京都の全日空ホテルを出発、カトリック奈良教会を訪問した。

戦時中、ローリー・リチャーズさんと同じ第8師団所属の従軍司祭だったライオネル・マースデン神父は、泰緬鉄道での日本軍の残虐行為に激しい怒りと憎悪の感情を抱いたが、自分がキリスト教の神父であることを思い起こし、戦争が終わって生還できたら、日本へ渡ってキリスト教の愛の精神を伝えようと考えるに至ったという。

そして、多数の元捕虜や遺族に呼びかけて賛同と援助を得、1949年にマリスト会の司祭として来日し、京都市左京区の銀閣寺付近に活動の拠点を置いて子供たちや学生を集めて愛の学校を開く活動を開始した。その後、1952年に活動の拠点をカトリック奈良教会に移すとともに、この事業はトニー・グリン(Tony Glynn)神父に引き継がれた。グリン神父は日豪両国での文化展の開催、日本刀の返還運動、カウラでの合同慰霊祭の実施などの、日豪の友好・和解活動を献身的に進めた。氏は奈良の登美ヶ丘教会を設立してそこで暮らし、1994年に亡くなった。マースデン神父とグリン神父の事蹟は、千葉茂樹監督の映画「愛の鉄道」(1999年)に詳しい。

カトリック奈良教会訪問は、ローリー・リチャーズさんがマースデン神父と知り合いだったことから希望されて日程に組み入れられたものである。奈良教会ではシドニー・ジョン・ニュジェント(S. J. Nugent)神父や、事務局の吉田顕朋さんをはじめ、信者の方々に温かく迎えていただき、懇談したが、今回の元捕虜一行の日本訪問の情報と意義が十分には伝わっていない嫌いもあった。それで、来年は、教会での講演会の開催なども含めて、もう少し、突っ込んだ交流を行いたいと考える。

その後、皆さんは奈良公園で鹿の大歓迎を受けながら東大寺大仏を見学、午後、バスで京都駅へ戻り、新幹線で、夕方に東京へ到着された。

奈良公園にて